Pur.
新しいオーナーが思い描く
ワイナリー設立の夢
余市川の右岸の東町の高台にあるブドウ園。それがpur.になる。北向きの斜面のブドウ園の標高は130から150メートルで、仁木町では最も標高が高い。畑からは、仁木町や余市町の街並みや余市湾、そして、余市平野のシンボルのようなシリパ岬も望める。
この一帯にブドウ園が拓かれたのは2015年。以前の持ち主から現在の持ち主である丹山東吉さんが引き継いだの21年だった。「当初はワイナリーを経営することは考えていたわけではなく、北海道の自然に触れながら、パンづくりや農業を一緒に楽しめるような施設を建てることを考えていました。その矢先、前オーナーと知り合い、ブドウ園を訪ねた際、景観が最高だったので、ブドウ園を引き継ぐことにしたのです」とオーナーの丹山さんは語る。その翌年には、待望の初収穫を迎え、翌々年の23年は委託醸造でワインもできた。
現在の植栽面積は3ヘクタールで、約9,000本のブドウの木が植えられている。栽培品種は8種類で、シャルドネが最も多く、全体の45パーセントを占める。それに次ぐピノ・ノワールも35%。この2品種で全体の8割を占めており、残りの2割は、ピノ・グリ、カベルネ・ドルサ、ピノ・ムニエ、ドルンフェルダーなどになる。将来は、この畑から25から30トンのブドウの収穫を目指している。23年には除草剤不使用に切り替えた。
丹山さんは来年の25年には、ワイナリーの設立を計画している。ワイナリーの敷地内には、飲食スペースやマルシェのエリアを設けて、同じ系列会社のベーカリーのパンを提供するというビジョンもある。ブドウ園に純粋という意味のフランス語のpur.という名前をつけたのも、ここを訪れる人たちが、純粋な感性で、ワイナリーのある場所から、仁木町や余市町の雄大な自然を体感して、心を安らぐことができるようにと願っているからだ。
初仕込みのワインは平均樹齢、約7年のピノ・ノワールのみから造られた。野生酵母による発酵で、醸し発酵に1週間かけて、樽の中で10カ月間、寝かしている。とはいえ、将来的には、シャルドネの白ワインが中心になる計画だ。
「一つの理由は、現在、畑の面積でこの品種の比率が最も高いからです。もう一つの理由は、お隣の余市町ではすでにピノ・ノワールでのブランディングが確立されつつあるから」と丹山さんは語っている。
オーナーの丹山さんは、元々は札幌での不動産業が本業。しかし、前述のように、前のオーナーとの出会いで、このブドウ園を引き継いだ。北海道に4店舗、ハワイに5店舗を構えるベーカリーを手掛けるようになったのも、1977年に創業された「ブルクベーカリー」が後継者探しをしていたから妥当いう。今回のブドウ園の継承も、単にブドウ園だけでなく、ワイン造りへの想いも継承していきたいと考えている。
ご自身も畑での作業に加わりながら、前オーナーの畑の所有時から、栽培を担当する稲沢秀人さんを中心にブドウ栽培を行っている。
フラッグシップワイン
銘柄
PINOT NOIR 2022
ぶどう品種
ピノ・ノワール
スパイスやシナモンの香りに
複雑な味わいの赤
立ち上るスパイスや土っぽい香りにシナモンの香りが溶け込んでいる。果実味、豊かな酸、旨みが渾然一体となっており、複雑な味わいが感じられる。渋みはとても穏やかで飲みやすく、後口感じられる旨みが印象的。