仁木産業振興社
協力隊出身者が集い、目指した
ワインの手頃な価格と入手のしやすさ
木産業振興社は、現状では実際のブドウ園は営んではいない。地域おこし協力隊の卒業生である福光賢治さん、当時は現役の隊員だった三浦夕佳さん、そして山口光市さんの3人が集まって、合同会社を設立し、購入したブドウを使って委託醸造でワインを造ったのだ。
きっかけは、福光さんへの地元の農家さんからのブドウの購入の打診。2022年8月のことだ。
「協力隊として町で活動する中で、地元のワインが地元で入手しにくいという話を耳にしていました。ワイン産地として、それは勿体無いと感じており、この機会を活かして、地元で気軽に買える・飲めるワインを造ろうと思いたちました」と福光さんは振り返る。そしてすぐに三浦さんと山口さんに声をかけた。2人ともワイン造りの経験はなかったが福光さんの意見に賛同。3人で企画をたてワイン造りに向かって動き出した。醸造は、町内のベリーベリーファーム&ワイナリーに委託して、2種類のスパークリングワインを造った。翌23年1月には合同会社を設立し、3月には酒販免許も取得、7月にはワインの販売へと漕ぎ着けた。
3人が造ったのは、ロゼと白、いずれも瓶内2次発酵のスパークリングワイン。ロゼスパークリングの「バッファロー・ペティアンロゼ」は、バッファローという生食用の黒ブドウが原料で生産量は636本。白のスパークリング、「ポートランドペティアン」はポートランドという香り高い白ブドウが原料で生産量は507本。いずれも過度に手を加えないことを心がけ、野生酵母で発酵させている。瓶内2次発酵で、飲み心地の良い微発泡酒に仕上げた。亜硫酸は無添加だ。
地元で買える・飲めるワインを目指すという当初の計画通り、合計で1,000本を超えた2022年物は仁木町観光管理センターでも販売した。また23年も同様に、余市町のブドウを購入して、スパークリングワインを造っている。ナイアガラと旅路で造った2種類のワインは、1,700本程度の生産量を予定している。
福光さん自身は香川県出身。東京などでのサラリーマン生活を経て、2019年に仁木町内に移住、農地を取得して「Landscape」という名前の屋号でワイン用ブドウの栽培を始めた。所有する土地は、畑に加えて山林もあり、面積は4.4ヘクタールにも及ぶ。その全てが余市川の右岸の東町に点在しているが、現在の植栽面積は2ヘクタール弱になる。一帯は平野部から東に向かい高台になっており、古くは「モンガク」と呼ばれていたようで、畑の間を走る町道や、近隣の縄文遺跡にもこの名が使われている。24年には、極少量にはなるが、自社畑初収穫のピノ・ノワールのワインをNIKI Hills Wineryに委託して醸造中。夏頃には待望の初リリースだ。ワイナリーの設立については現在検討中だが、今後は自社農園のピノ・ノワールを中心としたワイン造りに力を入れていきたいと考えている。
三浦さんは北海道岩見沢市の出身。北海道大学の大学院で観光社会学を学びながら、仁木町の地域おこし協力隊として活動を続けてきた。
「ワイン造りの趣旨に賛同したのはもちろん、仁木町の協力隊になっていなければ、こんな機会には恵まれないと思い、プロジェクトに参加することにしました」と三浦さん。大学院で修士は取得、協力隊も卒業し、今後は町での経験も活かして、大学で教鞭をとる。とはいえ、今後も北海道のワイン関連の仕事については機会を探して携わり、ワイン産業の現場にも関わっていく考えだ。
山口さんは北海道夕張市出身。
延べ40年の経験を持つ営業マンだったが、仁木町の観光協会の事務局長に勧められて、転身、地域おこし協力隊になった。
「仁木町に恩返しが何かできないかと考えていたので、このプロジェクトを聞いたときには、またとないチャンスだと思って、二つ返事で参加すると伝えました」と山口さん。「それに自分自身でワインを造ってみたいと思ったというのもありました」。町内に小さな果樹園を手に入れたので、今後は、果樹を育てつつ、ワインを造るという地域に密着した活動をしたいと考えている。
フラッグシップワイン
銘柄
NIKI-East Buffalo
Pétillant Rosé 2022
ぶどう品種
バッファロー100%
親しみやすく爽快な
ロゼの微発泡酒
イチジクのような香りに豊かな泡立ち。甘く感じる果実味にアクセントを添える豊かな酸、そして爽快な飲み心地。キレがあり小気味よい。弾ける魅力的な個性。地域起こし協力隊出身者たちが協力して造ったワイン。